薬剤師が未経験でメディカルライターに転職するってどうなの?
私は、病院薬剤師として3年の勤務した後に、調剤薬局で派遣薬剤師として働きながら転職活動をしてメディカルライターに転職しました。
メディカルライターとして働き初めて5年目の薬剤師です。
薬剤師仲間には、
「メディカルライターってどんな仕事してるわけ?」
「薬剤師の転職先としてアリなの?」
「仕事が忙しくてハードって本当?」
っていう質問をよく受けます。
調剤経験もある薬剤師の立場から、メディカルライターについてよく聞かれることやメディカルライター業界について紹介したいと思います。
メディカルライターって何?
メディカルライターは医療に関する記事を専門的に書くライター
健康・医療に関する専門情報を国民に適切に届けるためには、それを咀嚼しかつ適切な文章の形で発信する専門家が、雑誌・新聞・ホームページ等のメディアによらず必要です。この専門家がメディカルライターです(日本メディカルライター協会)。
要は、医療に関する記事をわかりやすく書くプロです。
メディカルライターが書いた記事の影響力は絶大であり、医師が処方する薬を変える、といったように、受け手が重要な行動変化をもたらすきっかけになるものです。
その重要性から、わかりやすくつたえることはもちろんのこと、正確さという点に非常に重きがおかれています。
欧米では長い歴史のあるメディカルライター
欧米ではメディカルライターの社会的地位は確立しており、職能団体としての学会も長い歴史を持っています。
たとえば、アメリカの学会 AMWA(American Medical Writers Association)は、1940年に設立され5,000人超の会員を抱えており、少人数の演習を基本とした教育活動や、単位取得に基づいた資格認定も行なわれています。
それに対して、日本では、メディカルライティングのような技術文書ライティングに関する高等教育はほとんど存在しない状況です。
同時に健康・医療情報を受けとめる一般の人々に対する教育、啓発などもほとんど存在していません。そのため、本や雑誌、インターネットでは、根拠のない健康法や医療に関する情報がゴロゴロしています。
メディカルライターの就職先はどこ?
メディカルライターの就職先は大きく分けると以下の3つです。
・製薬会社やCRO(医薬品開発業務受託機関)
・医薬系出版社や医療情報ポータルサイト
・医薬系広告代理店
自分がメディカルライターとして何がしたいか?によって就職先は大きく異なります。
メディカルライターになりたい!と思ったら、それぞれの就職先の仕事内容についてきちんと理解した上で応募するようにしましょう。
メディカルライターの仕事内容は?
メディカルライターの仕事内容は就職先によって大きく異なります。
@製薬会社やCRO(医薬品開発業務受託機関)の場合
医薬品開発に関わるライティング業務を行います。
新薬が世に出るまでには、製薬メーカーが研究・開発を行い、治験で安全性や有効性などが証明された治験薬を、厚生労働省に製造承認の申請を行う必要があります。
この厚生労働省に提出する薬事申請書類等の治験関連文書を作成するのがメディカルライターのお仕事です。また、医師や研究者の論文作成の補助を行うこともあります。
製薬会社やCROでのライティング業務は、一般的な「ライター」のイメージとはちょっと遠いかもしれません。
A医薬系出版社や医療情報ポータルサイトの場合
おもに最新の医療情報に関する内容について、医師などの医療従事者向けの雑誌やサイトに載せる記事のライティングをします。
記事の内容については、学会に行ったり、医師を直接取材したり、自分たちで調べたりして情報収集を行います
また、一般の方々向けに医療情報に関する記事を書いたりすることもあります。
製薬会社とは一線を画しており、基本的に独自に情報収集した内容を、製薬会社と医師の間に立って中立的な立場で発信する役割があります。
自由度が比較的高く、「ライター」のイメージに一番近いのがこのお仕事です。
B医薬系広告代理店の場合
その名の通り、広告代理店であるので、医薬品の広告・プロモーション活動に関わります。
具体的には、クライアントである製薬企業の製品情報概要や医薬品メーカーで使用するMR研修資料の企画・作成、医療用医薬品のパンフレット・ポスター等の作成などです。
製薬会社と二人三脚で行う仕事なので、ライティング内容もクライアントの意向を汲んだものになります。また、製作物の原稿作成や編集作業、医療用医薬品の新製品プロモーション企画立案サポートなども行います。
メディカルライターとメディカルコピーライターの違い
メディカルライターについて、明確な定義はありません。
そのため、製薬会社やCRO(医薬品開発業務受託機関)の医薬品開発に関わるライティング業務のみを「メディカルライター」とされ、特にプロモーション活動に関わるライティング業務などを行う場合は「メディカルコピーライター」と区別されている場合もあります。
メディカルライターになるには資格が必要?
メディカルライターになるのに、必要な資格は特にありません。何か資格がないとメディカルライターになれないわけではありません。
ただ、医学や薬学の知識や臨床経験等といった職務経験がある方が望ましいですし、薬剤師や医師、看護師の資格を持っているほうが仕事をしていく上で、有利になります。
また、スキル、経験豊富であれば、転職の際、年収交渉なども有利にすすむ可能性があります。
メディカルライターになるには、英語ができないといけないかと言うと、そうではありません。
ただし、英語の論文を読解したり、要約したり、あるいは海外の学会に取材に行くことなどもありますので、英語ができることは強みになります。プラスαのスキルとしては持っていると良いでしょう。
ライターという言葉から、黙々と一人で文章を作成するイメージして、人と関わりたくないからメディかルライターになりたい!と思う人もいるかもしれません。
しかし、医薬品の広告・プロモーション活動では、クライアントのそういった人には多分メディカルライターは向いていません。
製薬会社やCROでは、新薬や治験の申請書類、プロトコルの作成など、メディカルライティングの中でも非常に専門性の高い仕事をおこないます。
そのため、企業は即戦力を求める傾向にあり、求人情報を見てみると、大体以下のような条件が提示されています。
・医薬品開発全般、GCP、ICH関連ガイドラインを理解している
・国内の薬事規制に関する知識を有する
・薬学・医学的な基礎知識を有する
・薬学/理系学部卒業以上、又は同等以上の学歴・経験を有する
・英語ができる(TOEIC800点以上)
要は、経験者が欲しいということですね。
ただし、すべての企業がこれだけ厳しい条件を提示している訳ではないので、探してみる価値はあると思います。
メディカルライターは忙しい?残業や休日出勤の状況
メディカルライター薬剤師が、病院や調剤薬局などの薬剤師と大きく違う点は「会社員」であることです。そのため、働き方は一般的なサラリーマンやOLさんと同じ。完全週休二日制(土日祝)が基本です。
ただし、学会取材などでたまに休日出勤をすることもあるでしょう。といっても、年に数回程度であり、代休はもらえるはずなので、そのあたりも一般的な会社員と変わりません。
基本的に自分のペースで働けるのがメディカルライターの良いところです。自分の裁量次第で早く帰りたい日は帰れます。
ただし、納期などはもちろんありますし、仕事量も常に一定ではないので、残業をしなければならない場面も出てきます。
特に、製薬会社も代理店では新薬の発売前などが最も忙しくなり、終電ぎりぎりになることもしばしばあります。
ただ、常にそういう状態という訳ではなく、忙しくなければ定時でも帰れますので、たまにある残業を覚悟できるのであれば、問題なく働けるのではないかと思います。
未経験の薬剤師でもメディカルライターになれる?未経験者の研修など
未経験の薬剤師でも転職は十分可能です。特殊な職業のイメージのあるメディカルライターですが、未経験からでもなれます。
よく、興味はあるけれど、文章を書いたことなんてないし・・・と躊躇する方がいらっしゃいますが、メディカルライターの多くは、ライター経験ゼロからスタートしています。
未経験で入った場合、医薬品を取り扱う文書の書き方には細かいルールがあるので、それを勉強しながら、簡単な文書の作成から初めて行くことになります。
未経験のメディカルライターのための研修をもうけている会社は少なく、最初は作成した文書を上司や先輩に添削してもらって、都度、指導してもらいながら進めていく形がほとんどでしょう。
メディカルライターの年収ってどのくらい?
メディカルライターの年収は400万円くらいからで、経験を重ねれば年収1000万円以上も可能です。平均年収の相場は、400〜600万円程度です。
未経験であれば400万円程度から、ただし、薬剤師などは前職の経験などを考慮して交渉次第ではもっと高くなるでしょう。
さらに、経験や実績を積んでいけば、年収UPが期待でき年収1000万円近くもらっている人もいます。
転職サイトに掲載されていたメディカルライターの年収(一例)
勤務地 | 年収 | 掲載されていた転職サイト |
---|---|---|
東京 | 500万円〜700万円 | ファルマスタッフ |
東京 | 450万円〜500万円 | ファルマスタッフ |
これは公開求人の検索結果で出てきた一例ですので、非公開求人の方が条件がいいものが多いので、参考までにご覧ください。
メディカルライターは在宅やフリーランスで働けるのか?
薬剤師が過剰になると言われている一方で、メディカルライターはまだまだ少なく、需要が高いのが特徴です。そのためか、フリーランスで働く人も多くいますし、在宅でも仕事の受注はあります。
ただし、最初からメディカルライターとして在宅やフリーランスで働く、というのは少々難しいです。在宅やフリーランスでメディカルライターとして働くためには、それまでにそれ相応の実績を積んでおくことが必須でしょう。
しかし、一度実績を積んでしまえば、勤務形態を問わず働ける仕事というのは薬剤師からしたら珍しく、非常に魅力的とも言えます。
メディカルライターになってよかったこと(メリット)、大変なことやつらいこと(デメリット)
メリット
@勤務形態を問わず続けられる
前述の通り、メディカルライターとして一定の経験を積めば、在宅やフリーランスでも働けます。
家事や育児をしながらでもライティング業務はできますので、主婦やママになっても働き続けられるところは大きなポイントではないでしょうか。
A仕事内容が多岐にわたる
一口にライターといっても、扱う物は論文、雑誌掲載記事、広告記事など様々であり、その内容も、薬について書いたり病気について書いたり、医師のインタビューだったり、非常に多岐にわたります。
加えて、広告代理店であれば、ライティング作業のほかに、編集や校正などの作業もあります。日々の業務が単調でつまらない、と感じることはまずないでしょう。
B職場の人間関係が幅広い
調剤薬局では、同僚は数人の薬剤師と事務員くらいと狭い世界であることが多く、そこで人間関係がうまくいかないと大きなストレスとなってしまいます。
しかし、メディかルライターは、同僚のバックグラウンドも様々ですし、仕事をする上で製薬会社の人や取材対象の医師、看護師などの医療従事者、編集作業に携わる外部スタッフなど、関わる人の幅が広いです。
色々な人と出会い、接する機会が多いほど、得られる刺激も多く、自分自身を成長させてくれます。
C最新の薬や医療情報を知ることができて面白い
情報を発信していく立場なので、常に最新の情報が入ってきます。
薬剤師時代では知り得なかった現代医療の仕組みや薬に対する医師の考え方など、医療の深い部分を見ることができるのもメディカルライターならではないかと思います。
D物をつくる喜び
自分がライターとして携わったものは、雑誌やWEBに掲載されたり、広告になったりと何らかの形で残ります。
自分の成果がわかりやすく形になるという経験は薬剤師ではなかなか得られないですし、そういった物を手にしたときの喜びはひとしおです。
デメリット
@仕事の波がある
仕事のボリューム感によって忙しさが変わるので、暇なときは暇だけれども、忙しいときは忙しく、いつも同じペースで働けるという訳ではありません。納期などの問題で、時には無理を強いられることもあります。
A地味に大変
メディカルライターは正確さが必須です。そのために些細なことでもとことん調べたり、確認したりする必要があります。
数値が3.5なのか3.4なのか、有意さがあるのかないのか、などを解明するために、とことん文献を読んだりしますし、間違いが内容念入りにチェックするなど、地味な作業は多いです。
B将来的に薬剤師に戻る場合にブランクになる
メディカルライターとして一人前になるには4,5年はかかります。
薬や医療情報には触れているものの、現場からは離れるため、将来的に、薬剤師に戻ろうと思ったときにはメディカルライターとして働いたその期間は単純にブランク期間になりますので、現場に戻ったときに多少なりと苦労することは覚悟しなければなりません。
メディカルライターは薬剤師におすすめか?
下記のような人であればメディカルライターに向いていると言えます。
・薬剤師の経験を生かして、少し人と変わった仕事がしたい
・色々な人と話したり仕事をするのが好き
・文章を書いたり、物を作ったりするのが好き
・調べたり、間違いを探したりするのが苦ではない
メディカルライターになるには?求人の探し方?
メディカルライターの求人は特殊なため、ハローワークやホームページには出回っていません。
薬剤師転職サイトを通して求人募集をしています。そのため、メディカルライター求人を探すには、薬剤師転職サイトへの登録しておきましょう。
転職サイトのコンサルタントに伝えれば、メディカルライターの求人を紹介してくれます。
ただし、転職サイトによって、メディカルライターの求人を扱っているか、いないかがハッキリわかれます。私が転職活動で利用し、メディカルライター求人を紹介してくれた転職サイトを紹介します。
まずは登録して求人の状況を聞いているのがおすすめです。
ファルマスタッフ
コンサルタントさんの質がよく、懇切丁寧で知識も豊富でしっかり情報提供してくれるので、まずは登録しておくことをおすすめします!
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